2001年9月15日(木曜日) 朝日新聞

─ 記事全文紹介 ─
50音順に特集、八王子のタウン誌
折り返しは「ね」 大変だったね 発行から6年 主婦や教員奮闘
郷土の風物や日常のささいな1コマを紹介している八王子市内の季刊のタウン誌が、ネコを特集した今月発行の「ね」号で折り返し点を迎えた。ひらがなの50音順にテーマを設定するユニークな編集方針で、約6年がかり「24音」を達成。編集部では「廃刊の危機もあったが、ボランティアのがんばりで発行できた」と話している。
このタウン誌は「One Two えいと」で95年12月、出版関係者や郷土史家、大学教授らが創刊した。誌名は「1・2・3」の掛け声に、八王子にちなんで最後を「8(えいと)」にした。
創刊の「あ」号は市内を東西に流れる浅川を特集した。今では河川の水質ランキングで低い評価を受けている浅川も、戦前は子どもたちが泳ぎ回るほどきれいで、格好の遊び場だったことがつづられている。
八王子の街並みを彩るイチョウ並木を特集した「い」号を発行した直後、早くも廃刊の危機に陥った。印刷・発送代、執筆者への原稿料がかさみ、創刊前に賛同者から集めた約150万円の資金が底をついたのだ。
自費出版を応援する印刷会社を経営している編集長の清水英雄さん(61)は、こう振り返る。
「北条氏の八王子城、甲州街道の大きな宿場町、絹織物の産地と、八王子は多摩地域で最も歴史が深い。なのに文化を育む土壌にかけているんです」
こうした文化事業を支援する企業はほとんどなく、行政の理解も不十分だ。それまで発行されたタウン誌やミニコミ誌は、いずれも財政難から短命に終わったという。
そこで「One Two えいと」では、主婦や教員らボランティアに原稿料なしで記事を書いてもらうことにした。清水さんも自ら筆をとり続ける。当初は「営利的」と抵抗があった広告を目立たないように掲載し、資金を補った。広告が八王子の企業の動向をうかがわせる生活情報にもなると判断した。
以後、特集は「芸者衆」「地酒」「銭湯」「そば」「高尾山」「ニュータウン」…。地域の特色を浮き彫りにするテーマばかりで、昔話を語る人や街角の飲食店も丹念に紹介してきた。
次回12月発行の「の」号は「八王子の農業」に決まった。今後、順調に行けば6年後に「ん」で完結するという。
ただ、取材スタッフが固定化し、ネタ不足に悩むことも。「ひとつのテーマを掘り下げる記事をもっと掲載したい」と言う清水さんは、新風を吹き込むライターを募っている。
|